低用量ピルの副作用はどんな症状があるの?
低用量ピルの副作用が現れるかどうかは個人差があります。
では、主にどのような症状が出るのでしょうか。
下記は低用量ピル(OC)が日本で承認される際に行われた約5,000人の治験データで、5%以上の高頻度で現れる症状をピックアップしたものです。
調査によると、低用量ピルの服用を中止する理由はさまざまです。
そのうち、副作用を理由とした人は46%であり、各症状においては下記のような割合となりました。
参考:OC・LEPガイドライン2020年版
これらの症状が低用量ピルによって起こるものなのかは、多くの場合が不明といわれています。
つまり、低用量ピルの服用期間に症状がみられたけど、低用量ピルの副作用として起こっているのかは解明されていないことがたくさんあります。
※お薬の種類によって配合されているホルモンの種類が異なるため、現れる症状や頻度は多少異なります。詳しくはお薬に添付されている説明書(添付文書)をご確認ください。
低用量ピルの重大な副作用
血栓症のリスクがわずかながら上がる
低用量ピルの重大な副作用のひとつに「血栓症」があります。
低用量ピルを服用することでわずかながら発症リスクが高まります。
血栓症とは、血液の一部が固まって血のかたまり(血栓)となり、血管に詰まってしまう病気です。
ピルを飲んでいない人が血栓症を発症する割合は年間1万人に1〜5人であるのに対し、ピルを飲んでいる人は3〜9人。
また、発症は最初の90日間が最も多く、飲み続けている人の発症は少ないという結果が出ています。
ちなみに交通事故で負傷する確率は年間で約0.4%、つまり1万人に40人なので、ピルを飲んで血栓症を発症するリスクは交通事故にあうリスクより低いといえるでしょう。
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乳がん・子宮頸がんのリスクがわずかながら上がる
低用量ピルの服用により、乳がんと子宮頸がんのリスクが上がることが分かっています。
そのため日本産科婦人科学会により、低用量ピルを服用する際のがんに関する検診は、下記が推奨されています。
【服用開始タイミングで受ける検診】
- 服用前:乳がん・子宮頸がん検診
- 半年後:乳がん検診
- 1年後:子宮頸がん検診
【その後の検査タイミング】
- 乳がん:月に1回のセルフチェック。家族歴(血縁者に乳がんになった人がいる方)がある方は1年毎の乳腺超音波検査またはマンモグラフィーによる画像検査
- 子宮頸がん:1年に1回受診
※健康診断や地方自治体の制度を活用し、定期的に検査を受けるようにしましょう
医師よりそのリスクや検診の頻度など、説明があるかもしれません。
がんは早期発見が大切です。定期的に受けるようにしましょう。
参考:OC・LEPガイドライン2020年度版
なお、低用量ピルを服用していない場合は、下記のタイミングで検診することが推奨されています。
- 子宮頚がん・・・20歳以上/2年に一回
- 乳がん・・・・・40歳以上/2年に一回
注意が必要な副作用の症状
下記の症状が現れた場合は血栓症のリスクが考えられます。
すぐに服用を中止し、循環器内科や血管外科がある近くの病院を受診しましょう。産婦人科でなくても問題ありません。
■血栓症リスクが考えられる症状
また、血栓症だけではなく下記の症状にも注意が必要です。
低用量ピルに含まれるお薬の成分に対してアレルギー症状が出ることがあります。下記の症状が現れた場合も、近隣の内科や皮膚科、アレルギー科などを受診してください。
■アレルギーが考えられる症状
低用量ピルの副作用が現れたときの対処法
低用量ピルは症状に合わせてできる対処法があります。ただ、「注意が必要な副作用の症状」でご紹介した症状が現れたときはすぐに医師にご相談ください。
そのほかの症状でも、不安を感じることがあったらお薬を処方してくれた医師や、スマルナ医療相談室をご活用ください。
3シートほど服用を続ける
低用量ピルの服用を始めると、体内のホルモンバランスが変化します。
そのため、飲み始めたタイミングで副作用が現れることがほとんどです。
飲み続けることで体内のホルモンバランスが整い、副作用の多くの症状はおさまっていくため、3シートほど服用を続けます。
頭痛薬や吐き気止めを服用する
頭痛や吐き気が現れている場合は、症状に合わせたお薬を併用することで対処ができます。
飲み合わせなどが心配な場合は、お薬の添付文書を確認したり、医師・薬剤師に相談したりしてみてくださいね。市販薬でも使用できるものがあります。
低用量ピルの種類を変える
副作用がひどい場合、服用している低用量ピルが身体に合っていないのかもしれません。
低用量ピルにはさまざまな種類があり、お薬を変えることで副作用の症状が改善することがあります。
低用量ピルの副作用における研究データ
服用者の20%が経験する不正出血
低用量ピルを服用する人の約20%の方が経験するというデータが報告されています。
参考:OC・LEPガイドライン 2020年度版
不正出血が起こる原因は、低用量ピルを服用することで体内のホルモンバランスが変化するから。
3周期(3シート)ほど継続していくと、不正出血は治まっていくことがほとんどです。
飲み続けると治まると言われても、不安を感じることもあるかと思います。
その場合は遠慮なく、「不正出血が止まらずに不安であること」をお医者さんに相談してみてくださいね。
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「太る」と「気分変調」はピルとの関係が確認されていない
ピルを飲んだら太る、気分変調(落ち込んだ気分になる)が起こるなどの話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
実際に副作用として報告されている症状ではありますが、実際はピルと体重変化や気分変調についての因果関係は確認されていません。
薬を飲み始めたタイミングでは、体内のホルモンバランスの変化によって「むくみ」や「気分の変化」を感じる方もいるかもしれません。
これも飲み続けることで解消されていくと言われています。
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ピルは副作用が強いお薬?
低用量ピルの副作用には個人差があり、強く感じる人もいれば、それほど感じない人もいます。
「ピルは副作用が強い」と言われている理由の一つに、昔は中用量ピルが使われていたということがあります。
低用量ピルが日本で認可されたのは1999年。それまでは中用量ピルが使われていました。
中用量ピルは、お薬に配合されている卵胞ホルモンの量が低用量ピルの2〜3倍です。低用量ピルよりも副作用が出やすかったため、その当時の名残で「ピルは副作用が強い」というイメージが残っているようです。
最近では、中用量ピルは治療や生理日移動を目的に処方されることがありますが、日常的な避妊やPMSなどの症状の緩和などで使用する場合には低用量ピルを使用する場合が多いです。
最近の低用量ピルは種類が豊富
最近では低用量ピルにもさまざまな種類があります。
お薬に使われているホルモンの種類や配合量が工夫され、副作用などの安全性を考慮したお薬の開発が行われています。
配合されている卵胞ホルモンの量を低用量ピルよりもさらに減らした「超低用量ピル」という種類もあります。
頭痛や吐き気などの副作用が、比較的出にくいといわれています。
※超低用量ピルは月経困難症などの治療を目的として処方されます。
副作用がつらい場合、お薬が身体に合っていないことも考えられます。その場合はお薬を変えることで副作用が軽減することも。
副作用がみられた場合は我慢せず、お気軽に医師へご相談ください。
まとめ
低用量ピルは副作用がありますが、たくさんのメリットもあります。
また、お薬は安全に服用が継続できるようにとさまざまな種類が開発されています。
さらに安心してお薬を服用するために、定期的に診察を受けたり、いざというときの対処法を知っておいたりすることが大切です。
重大な副作用の血栓症は予防する方法もありますし、発症しても適切に治療すればほとんどの場合は治る病気です。
気を付けるべき症状を知っておくことで早めの対処が可能になります。
飲み始めて身体に普段とは違う症状がみられた場合、不安を感じることがあると思いますが、飲み続けることで得られる嬉しい効果がたくさんあるお薬です
少しでも気になることがあれば我慢をせずに、低用量ピルを処方した医師や「スマルナ医療相談室」までお気軽にご相談ください。
監修医師:窪田真知先生
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