IUSはIUDの一種
そもそも子宮内避妊器具(IUD)とは?
IUD(子宮内避妊器具)は、子宮内に装着する小さなプラスチック製の避妊アイテムです。非常に高い避妊効果を発揮すると言われていて、一度装着すると、約3~5年間は継続して避妊効果を得ることができます。
ホルモン剤にアレルギーがある・授乳中・前兆のある偏頭痛持ち・血栓症リスクが高い、などの理由で低用量ピルを服用できない方でも、IUDは装着ができます。
IUDにはいくつか種類があり、銅が巻き付いている「銅付加IUD」や、黄体ホルモンが付加されている「IUS」などがあります。
※IUDは子宮内避妊器具を英語にした際の「Intrauterine Device」の略。
子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)とは?
子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)は、IUDの1種です。黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が付加されており、IUSを装着すると黄体ホルモンが子宮内に少しずつ放出されます。
※IUS=Intrauterine Systemの略
【IUSで得られる2つの効果】
①避妊効果
放出された黄体ホルモンが子宮内膜の成長を防ぎ、受精卵が着床しにくい状態を保つことで、IUSは避妊効果を発揮します。また、子宮の入口にある頚管粘液の粘性を高め、精子を子宮内に侵入しにくくする働きもあります。
②生理痛の緩和や出血量の軽減
さらに、黄体ホルモンの影響で子宮内膜が薄いままになるため、生理痛の緩和や出血量の軽減にも役立ちます。このため、IUSは月経困難症や月経過多の治療として使われることがあります。
※装着や除去は、IUDと同じように医療機関にて施術が行われます。
IUSのメリットとデメリット
メリット
①安定した高い避妊率
IUSの避妊率は99.8〜99.9%です。
一般的な避妊法として使用されるコンドームは、破れたり、サイズが合わず途中で外れたりする場合があるため、平均的な避妊率は約87%です。
低用量ピルは避妊率が99.7%ですが、毎日正しくお薬を飲む必要があり、飲み忘れなどがあった場合は避妊効果が下がってしまいます。
IUSは装着中に問題が生じない限り、安定した避妊効果を得ることができます。
②長期間の避妊効果
1回の装着で数年間の避妊効果が得られます。近い将来に妊娠を望んでおらず、長期的に避妊を行いたい方などに向いています。
③低用量ピルが飲めない人でも装着可能
ホルモン剤にアレルギーがある・授乳中・前兆のある偏頭痛持ち・血栓症リスクが高い、などの理由で低用量ピルを服用できない方でも、IUSは装着できます。
ピルが飲めないけど、「もっと確実な避妊を行いたい」「生理痛や出血量を軽減したい」という方にオススメの選択肢です。
④生理の回数が減ることも
IUSを装着後、日数の経過とともに生理の回数が減っていくことがあります。約20%の人は、IUSを装着して1年後に生理が来なくなると言われています。
しかし、妊娠の可能性もあるので、IUSの装着中に6週間以上生理が来なくなった場合は、妊娠検査薬を使って妊娠の有無をチェックするようにしましょう。
デメリット
①挿入時の痛み
個人差はありますが、IUSを挿入する際に痛みや出血を伴うことがあります。
出産経験のない方は、特に痛みを感じやすいようです。
不安な場合は、施術を受ける前に医師に相談してみましょう。
②副作用
人によっては、数ヶ月〜半年ほど不正出血が続く場合があります。
貧血につながる危険もあるので、出血があまりに長く続く場合などは、医師に相談しましょう。
③まれに発生するアクシデント
まれに、子宮からIUSが脱出してしまったり、IUSが子宮に入り込んで炎症を起こすことがあります。
装着中は、定期的に検診を受け、IUSの位置などを確認する必要があります。
IUSの費用
IUSの使用にかかる費用は4~8万円ほどで、医療機関によって異なります。
※交換や除去の際には別途費用がかかります。
また、月経困難症などの治療に用いられる場合は保険適用となり、IUDと比べて安価で装着が可能です。例えば、治療目的で1万円で挿入したIUSを、5年間装着し続けた場合は「170円/月」で避妊効果と治療効果の両方が得られることになります。
避妊目的のみの場合も、5万円で挿入したIUSを、5年間装着し続けた場合は「830円/月」で避妊効果が得られることになります。
IUSは、コンドームやピルよりもはるかにコストパフォーマンスに優れた避妊方法であるとともに、月経困難症などの治療においても、ピルや漢方等に比べてかなり経済的な治療法と言えます。
気になる副作用
IUSの副作用には、以下が挙げられます。
- 装着後数日間の出血・下腹部痛・腰痛
- 生理周期の変化
- 生理期間が長くなる
- 不正出血
- 卵巣のう胞(卵巣の内側や表面に液体の詰まった袋ができること)
人によっては、数ヶ月〜半年ほど不正出血が続く場合があります。
症状がひどい場合や、出血があまりに長引く場合などは、病院を受診しましょう。
また、卵巣のう胞はホルモンの変化に伴う一時的な症状であることが多いですが、まれにのう胞が大きくなって破裂してしまうことがあります。のう胞が破裂すると、激しい腹痛を伴い、緊急手術が必要になることも。
IUS装着後に卵巣のう胞が見られた場合は、医師の指示に従って定期的に検診を受けることが大切です。
重大な副作用
まれではありますが、以下のような問題が起こってしまう場合もあります。
- IUSが子宮の壁に入り込む(穿孔)
- 子宮以外の場所で受精卵が育つ(異所性妊娠)
- 子宮や卵管の炎症(骨盤炎症性疾患)
発熱、下腹部痛、急な出血やおりものの異常など、身体に異変を感じたらすぐに医師に相談してください。
気になる挿入方法と、装着における注意点
IUSは「どうやって着けるの?」「誰でも着けられるの?」「セックスに影響するの?」など、まだまだ色んな疑問があるかと思います。
▼これらの気になるポイントについては、下記の記事で詳しくまとめています。
避妊について
IUD/IUSの装着方法と注意点:気になるポイントをわかりやすく解説します
2022/5/20
まとめ
IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)は、IUD(子宮内避妊器具)の一種で、高い避妊効果だけでなく、生理痛の緩和など嬉しい効果を持ち合わせています。
長期間に渡って避妊を希望される方や、ピルを服用できないけれど生理痛や出血量を軽減したい方に適した選択肢と言えます。
「試してみたい!」と思ったら、まずは事前に医療機関に問合せ、IUSの施術を行っているかどうか聞いてみましょう。
※IUSの装着には、子宮のエコー検査や性感染症の検査などを行う必要もありますので、受けるべき検査などについても問い合わせ時に確認しておくといいでしょう。
なお、医療機関によっては、出産経験のある方にしか施術を行っていない場合もあります。
詳しくは、診察の際に医師に直接相談してみましょう。
医師監修:小林克弥先生
自分の状態を相談したい場合は?
不安なこと、お悩みを薬剤師・助産師に直接相談することができます。